vol.14:6月の写真展の×

×「時代を彩った貌」東京都写真美術館5月26日〜6月10日

 都の写真美術館は、ガーデンプレイスに出来る前の仮の建物のときはよく行っていたが、近頃はめったに行かなくなった。入場料が高く、車で行くと駐車料金もかかるため、映画1本分くらいの値段になるからだ。だいたいタイトルがそそらない。「〜とその周辺」とか「〜の時代」とつけられてもお金を払ってまで見に行く気になれない。

 同じお金を払うならデパート系の写真展に行くことが多い。東急文化村美術館の写真展は、ほとんどが当たりで安心して行くことが出来る。満員で入場制限していることさえあるくらいだ。今は7月1日まで「ラグーライ写真展」が開かれている。インド人カメラマンが見たインドということで新聞、雑誌にも大きく取り上げられている。(朝日新聞主催ということもあるけれど)タダ券が出回っているとはいえ商業的にも成功しているだろう。都の写真美術館の運営が問題になっているがこれははっきり言ってしょうがない。コンテンツに差がありすぎると思う。

 6月9日に久しぶりに写真美術館に行った。その時行われていたのが、「時代を彩った貌展」だった。入場は無料で「東京都もちょっとは考えたのかな」と思ったのだが、中の展示を見てがっかりしてしまった。作家や著名人のポートレートで土門拳から秋山庄太郎、林忠彦と続くのだが、年代を追うごとにつまらなくなる。写されている人達に魅力が薄くなっているのもあるが、グラフ雑誌用に撮ったものを抜き出しているだけというものも多かった。腹が立ったのは一番若い写真家が坂田栄一郎と言うことだ。その後の写真家はどうしたというのだ。時代を彩るというなら旧いものから現代まで繋げろと思ってしまう。斎門富士夫とか藤代冥砂とか若いのでいっぱいいるだろう。今回の展示は写っている人がいかに有名かを競いすぎている。「時代を彩った写真家」を基本に人選と作品を考えればもっと楽しい構成になったろうに。美術館が東京都のもので、写真月間の一つということで分かりやすい展示を考えたのだろうが、写真展を見たという満足感は非常に乏しい。目録が2000円で売っていたが買う気にもなれなかった。

 土曜日にもかかわらず館内はガラガラだった。せっかく出来た写真美術館がなくなるのはとても困る。もっと見せる写真展を!