vol.58:FinePix F601

久々にカメラを買った。コンパクトデジカメ、フジのファインピックスF601。発売したばっかり。去年買った4500が素晴らしかったので同じシリーズの最新型を手に入れた。4500で何の問題もないのだけど、デジカメを仕事で使いたくなったので2台目を購入。1台だとなにかと心配だから(故障とか)。もう一台4500と言うことも考えたのだが、デジカメに関しては「最新の1台が最良の1台」ということでF601に決定した。


最新式だけあって機能てんこ盛り。光学3倍ズームがスリムなボディについていたり、ISO感度を設定できたりとカタログスペックは申し分ないのだけれど、その分操作が複雑になり4500のような軽快さが消えてしまった。なにより仕上がりがきれいになりすぎ4500のような味のある色が出なくなった。もっともきれいになったからといって文句をつけるやつはいないだろうけどね。


ファインピックスのようなお遊びのデジカメをなんの仕事に使うかと言うと、ある写真集の撮影で使いたいのだ。初対面のカメラマンと被写体が海外で始めて顔をあわせて、お互い探りあいながら撮影を進め、最終的にうちとけるという企画。だから前もっての段取りとか一切なし。ライブな雰囲気を出したいのでデジカメを使うことを考えたのだ。シャッター音もなくピントも露出も気にしなくていいコンパクトデジカメなら今まで撮れなかったようなシーンも撮れるはず。もっともデジカメだけで撮りきるつもりはなく35ミリポジやローライにカラーネガをつめて持っていくつもりだ。




以前「vol.41デジカメからプリント」で書いたがデジタルデータをプリントに起こして印刷に回そうと思っている。まどっろこしいが今現在はこれが一番確実だろうと思う。デザイナーや編集者を説得するため以前プリントしたテディベアの写真を持っていったが、コンパクトデジカメのクオリティの高さに驚いていた。




最近カメラマンの話題と言えばデジタルのことばっかり。友人もニコンの40万円のスキャナーを導入したり、1眼レフタイプのハイエンドデジカメを買ったり、仕事でバンバン使っているのも出てきた。写真専門誌のコマーシャルフォトもデジタル記事が売りになっているし、プロ機材用品ショーの目玉もデジタル、デジタル。いろんなところからデジタルの断片的な知識だけが入ってくる。


詳しい話が聞きたいと印刷会社のデジタル写真部門にいる僕の元アシスタントをつかまえた。ところがそいつに話をきいてもレベルが極端に違いすぎてまるで参考にならない。「ヒストグラムで露出を見る」?「シャドーで潰れるところはデータを作る」??「光物のブツ撮はライティングを分けて撮って後で合成する」???話をそばで聞いているときはフーンと頷いているが、実はなにがなにやらチットも分かっていないのだ。


さすがにあせる。デジタルに関してなんにも知らないに等しいのだ。僕もとうとう編集者に「デジタル入稿やってみようよ」と持ちかけてみた。ところがその編集部では、実験的に大量の説明カットにデジタルカメラを使ったところ、撮影は問題なかったのだけれど印刷所にまわした段階で「データの整合性をとる作業をそちらでやってくれ」と言われ、カメラマンが一つ一つ「マゼンダが何十パーセント」と指定しなくてはならなくなったというのだ。結局カメラマンはお手上げ状態になり、知り合いのデジタルに詳しい人に泣きついたといっていた。「それでも渡部さんやりますか?」と聞かれては笑うしかない。


「キャリブレーション」に「CMYK」にと、いままで印刷のプロがやっていたことにまでカメラマンがタッチしなくてはならなくなってきている。デジタル化は末端の人間にしわ寄せが来るようだ。もっと楽に使えるようにならないのかね。よく言われるデータの基準化が早く進んでくれればいいのだけれど。今年中に写真家協会と印刷会社とメーカーが協議して基準作りを始めるというから、僕の本格デジタルデビューはそれからになりそうだ。それまでしばらくはファインピックスだな。




今の僕は、デジタルで撮ってアナログ(プリント)で納品。うまくファインピックスが仕事で使えたらまた報告します。