vol.80:アシスタント急募

このコラムにも、アシスタントWとして度々出てくる渡辺茂樹が僕の元を離れることになった。




二年前、初めての写真集を発売したときに、奥付に小さくメールアドレスを入れておいた。発売後、読者からポツポツと感想メールが入り、それを読むのが楽しみになっていた。ある日、見知らぬアドレスから「アシスタントを希望します」というタイトルのメールが入った。


読んでみると写真集を見て送ってきたようだ。29歳、有名私立大卒、米留学経験有り、現在某大手広告制作会社にて海外事業部勤務、写真学校に週一で通うも本格的な経験なし、カメラマンになりたいのでアシスタントを希望しますという内容だった。


メールを読んだ後、思わず妻に言った。「オーイ人生捨てそうなヤツからメールがきたゾー」




アシスタントになるというのは、今までのキャリアを棒に振りかねない極めて無謀な選択。僕が親なら泣いて止めそうだ。


しかし写真集を買ってくれたことだし、ちょうどその時のアシスタントが2ヶ月後くらいに出る予定だったので、とりあえず会ってみることにした。どんなやつか見てみたいというのもある。


駅で待ち合わせた坊主頭の彼は、普段スーツを着ているサラリーマンにはとても見えなかった。ガタイもよく「荷物、いっぱい運べそう」と思わせる。事務所で話しをすると、社会経験がある分だけ大人だった。僕が仕事で撮った写真を見せ、写真の話しをしているうちにいつの間にかアシスタントをやってもらうことになった。ただひとつ、親にはちゃんと説明しておくのが条件だ。


案の定、母親に泣かれたらしい。そりゃ泣くわな。息子が訳の分からない道に進もうとしているのだから。さぞや心配だろうな。今では応援してくれているらしいので僕もちょっとホッとしている。


一作年の1月から始めて、早いものでもう二年になる。全然知らなかった写真の知識も驚くほど増えた。アシスタントとして働くと、学校で教わる知識とは違い、極めて実践的な内容を短期間で覚えることが出来る。


撮ってくる写真も前はハナクソのようだったのに昨年暮あたりから急に良くなった。なにせ年が年だから今までのアシスタントに比べても切羽詰っている。最初から二年限定としてスケジュールを立てたのもよかったのかもしれない。今では取材物の撮影をこなし、友人のデザイナーからの仕事写真も撮っている。12月からは、経験を積むため、ある出版社の写真部にしばらくやっかいになることになった。


ずっと一緒だったアシスタントが離れていくのは毎回寂しいものだ。これまでもたくさんのアシスタントが巣立って行った。彼らがいい仕事をしていると聞くと僕も嬉しくなる。この辺は学校の先生と似たような感情かもしれない。


次のアシスタントは女性だ。回り道をしてきたがやっぱり写真を職業にしたいとやってきた。一度は断ったもののどうしてもやりたいという気持ちが強かったのでお願いすることにした。



と、ここまで書いたところで緊急事態発生!


たった今、その彼女から電話で親の反対もあってアシスタントを断りたいと連絡があったのだ。なんでも親の猛反対にあったらしい。しょうがない、親としてみればもっともな話しだ。写真は職業としなくても続けていける。でも、来月から僕一人での仕事になる。まいったな。


急告

というわけで、急遽アシスタントを募集します。年齢、性別、経験は不問。写真学校を出ている必要はありませんが、二年から三年でプロになる決意のある人、一日中写真漬けの生活が出来る人、車の運転が得意または好きな人に限ります。事務所の最寄り駅は、西武池袋線「江古田」か都営大江戸線「新江古田」。委細は面談としますが、アシスタント料だけで生活するのは無理です。自宅、または住むところが保障されていないと難しいと思われます。どんな仕事をするかはギャラリーの「WORKS」を見てください。とりあえずメールを待っています。

mail@satorw.com アシスタント希望まで。

※アシスタントの募集は現在、終了しました。御応募有り難うございました。

(2002/11/30)